ベトナムの新たな給与支払い義務

ベトナム政府は最低賃金の上限と社会保障負担の改訂を行いました。その多くは2018年1月から有効となります。新法案への確実な順守のため、国内外の企業は改訂に対する取り組みを余儀なくされるでしょう。今回の改定は、給与支払い義務と被雇用者の可処分所得(純粋な手取り額)に影響を及ぼすこととなり、すでに最低賃金・被雇用者の給与上限・外国人労働者の社会保障負担について変更が行われています。

最低賃金

最低賃金額レートは、適正な支払業務を行う上で非常に重要です。ベトナムでの現行の最低賃金は2種類に分けられます。

一つ目は共通最低賃金で、国有組織・企業の被雇用者の給与計算に適用されます。この共通最低賃金は2018年1月以降、月額130万ベトナムドン(57米ドル)から9万ベトナムドン引き上げられ、139万ベトナムドン(61米ドル)となっています。

地域別最低給与

二つ目の地域別最低給与は、全民間企業の被雇用者に適用され、政府の定めにより地域ごとに異なります。国家賃金評議会は2018年1月以降の地域別最低給与レートについて、最終的に以下の通りに決定しました。
地区I  : 月額398万ベトナムドン
地区II : 月額353万ベトナムドン
地区III : 月額309万ベトナムドン
地区IV : 月額276万ベトナムドン

社会保障計画案

ベトナムで義務として定められている社会保障は、以下の3つです。
社会保険(SI)
健康保険(HI)
失業保険(UI)
社会保険と失業保険はベトナム国民のみの適用が認められていて、健康保険はベトナム人だけでなく、外国人も加入する必要があります。

社会保障負担(社会保障積立金)の基本を変更

社会保険・健康保険・失業保険の負担を低く抑えるため、ベトナムの企業の大半は、給与総額も低く設定しています。そうすることで企業側も被雇用者も得をしてきたからです。
これまで社会保障負担の算出に用いられていた給与には、2018年1月から基本給の他に、各種手当やその他の報酬が含まれることとなります。その際、以下の項目が労働契約に盛り込まれます。

役職手当

管理責任者手当
過酷労働・危険物および危険薬物の取り扱いに関する手当
地域手当
移動手当
誘致手当

その他の手当も上記のいずれかと同様の内容になります。
社会保障負担のベースに含まれないのはボーナス、インセンティブ、食事手当、ガソリン手当、通信手当、交通手当、育児手当です。
2018年1月以降、社会保険及び健康保険が適用される最低賃金の上限は、月額2、600万ベトナムドン(約1,140米ドル)から月額2,780万ベトナムドン(約1,140米ドル)まで引き上げられます。この引き上げが実施されることで、雇用者・被雇用者が負担する強制保険の負担も増加することとなります。

社会保険

2018年1月以降、全外国人および在留外国人労働者も社会保険負担の対象となります。保険適用の範囲は、疾病、産休、就労中の疾病・事故、退職・死亡です。非雇用外国人がベトナム国外に退去する場合、一度だけ恩給の請求をすることが可能です。
非雇用外国人の社会保険負担の割合は8%、雇用者は17.5%となります。

健康保険

非雇用外国人の健康保険負担の割合は1.5%、雇用者は3%です。
2018年1月以降、健康保険料負担に該当する地域別最低給与の上限は地域により異なり、5,520万〜7,960万ベトナムドンの間となります。
地区I :月額7,960万ベトナムドン
地区II :月額7,060万ベトナムドン
地区III :月額6,180万ベトナムドン
地区IV :月額5,520万ベトナムドン